9月の給与計算ガイド!定時決定と税制改正下の年末調整準備を解説!

企業の経営者様、人事・労務担当者の皆様、こんにちは。
社労士事務所ぽけっとです。
毎月の給与計算業務、本当にお疲れ様です。
数ある給与計算業務の中でも、9月は年に一度の重要な手続きが重なる特別な月です。
その理由は大きく2つあります。
1つは、多くの従業員の社会保険料がこの9月から改定されること。
そしてもう1つは、「年末調整」の準備を始める絶好のタイミングであることです。
特に2025年は、扶養控除の見直しをはじめとする税制改正により、年末調整が例年以上に複雑になることが見込まれます。
早めの準備が年末の業務負担を大きく左右します。
そこで今回は、「9月の給与計算」で担当者が絶対に押さえておくべき2大ポイント、「社会保険料の定時決定」と「税制改正下の年末調整準備」について、分かりやすく徹底解説していきます。
ポイント1:9月から社会保険料が変わります【定時決定】
9月の給与計算でまず押さえるべきなのが、健康保険料と厚生年金保険料の改定です。
これは「定時決定」と呼ばれる手続きによって、従業員一人ひとりの保険料額が見直されるために起こります。
そもそも「定時決定」とは?
定時決定とは、毎年1回、社会保険料の計算の基礎となる「標準報酬月額」を見直す手続きのことです。
社会保険料は、給与額を一定の範囲(等級)で区切った「標準報酬月額」に保険料率を掛けて計算されます。
このズレを解消するため、毎年7月1日時点の全被保険者を対象に、4月・5月・6月の3ヶ月間に支払われた給与の平均額をもとに、その年の9月から翌年8月まで使用する新しい標準報酬月額を決定します。この手続きが「定時決定」です。
いつから、どうやって変更するの?
定時決定によって新しくなった標準報酬月額は、その年の9月から適用されます。
具体的には、9月分の社会保険料から新しい保険料額で計算する必要があります。
多くの企業では、社会保険料を翌月払いの給与から控除している(例:9月分の保険料を10月支給の給与から控除)ため、自社のルールを再確認することが重要です。
もし、当月控除している場合は、9月支給の給与から変更が必要なので注意が必要です!
- 当月控除の場合:9月支給の給与から新しい保険料額で控除
- 翌月控除の場合:10月支給の給与から新しい保険料額で控除
8月中旬から9月上旬にかけて、日本年金機構から「標準報酬月額決定通知書」が届きます。
この通知書に基づき、給与計算ソフトの設定変更などを必ず行いましょう。
担当者が確認すべきチェックリスト
「標準報酬月額決定通知書」が届いたら、以下の点を確認しましょう。
- ✅ 対象となる従業員全員の名前が記載されているか?
- ✅ 決定された標準報酬月額に不自然な点はないか?
- ✅ 給与計算ソフトの社会保険料マスタ設定を更新したか?
- ✅ 自社の控除タイミング(当月or翌月)を再確認したか?
ポイント2:税制改正で超重要!9月から始める年末調整の準備
「年末調整はまだ先」と思っていませんか?今年は特に、9月からの早期準備が年末の業務負担を大きく左右します。
なぜ今年は9月からの準備が必須なの?
2025年(令和7年)は扶養控除の見直しなど重要な税制改正が行われます。
これにより、申告書の様式変更や控除額の計算が例年と異なる部分があり、担当者の確認事項が増加します。
年末の多忙な時期に混乱を避けるためにも、9月の段階で変更点を正確に理解し、計画的に準備を進めることが不可欠です。
9月にやっておくべきこと
まずは以下の準備から始めましょう。
- 税制改正内容の確認(最重要)
まずは担当者自身が、今年の年末調整における変更点を正確に理解することが不可欠です。
国税庁のウェブサイトなどで最新情報を確認し、特に扶養控除に関する改正内容は重点的に把握しておきましょう。 - 各種申告書の準備
2026年分の「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」や、2025年分の「給与所得者の保険料控除申告書」などを準備します。
税制改正に伴い様式が変更される可能性があるため、必ず国税庁のサイトから最新のものをダウンロードしましょう。 - 従業員への事前アナウンス
年末調整のスケジュールと、今年は手続きや申告書の書き方が例年と異なる可能性があることを従業員に通知します。
生命保険料などの控除証明書を紛失しないよう保管してもらうアナウンスも例年通り重要です。 - 扶養家族の状況確認
従業員に対し、今年の初めに提出した申告書の内容から変更がないかを確認するよう促します。
特に、今回の税制改正は扶養家族の状況に大きく関わりますので、例年以上に正確な情報の申告を従業員に促しましょう。
【まとめ】計画的な業務で9月を乗り切ろう
今回は、2025年9月の給与計算で押さえるべき2大ポイントを解説しました。
- 社会保険料の定時決定:「標準報酬月額決定通知書」に基づき、9月分の社会保険料から正しく改定する。
- 年末調整の準備:税制改正に対応するため、情報収集と従業員への早期アナウンスを始め、年末の業務負担を軽減する。
9月は、当月の給与計算を正確に行うと同時に、複雑な年末調整を見据えた準備も始める重要な月です。
計画的に業務を進め、従業員との信頼関係をさらに深めていきましょう。
「今年の年末調整は税制改正があって不安だ…」「変更点を正しく理解できるか自信がない」など、労務管理に関するお悩みがございましたら、専門家である私たち社労士事務所ぽけっとに、どうぞお気軽にご相談ください。
専門家の視点から、貴社の状況に合わせた最適なサポートをご提供いたします。
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