育休中でも働ける?「産後パパ育休」と「育休」中の就業ルールを社労士が徹底解説!

育休中の「ちょっとだけ勤務」、そのルール知っていますか?

こんにちは!あなたの街の頼れるパートナー、「社労士事務所ぽけっと」です。

最近、「育児休業中でも少しなら働けますか?」といったご質問をいただく機会が増えました。
特に、2022年10月から本格スタートした「産後パパ育休(出生時育児休業)」は、休業中に働くことも想定された新しい制度で、関心をお持ちの経営者様や従業員様も多いのではないでしょうか。

そこで今回は、「育休中の就業」をテーマに、いざという時に慌てないためのルールを分かりやすく解説します。
「産後パパ育休」と「通常の育児休業」、それぞれのケースに分けて、就業が可能な時間の制限や、事前に必要な社内手続きについて一緒に確認していきましょう!

◆ そもそも育休中に働いてもいいの?基本の考え方

まず大前提として、通常の育児休業は、その名の通り「休業」するための制度です。
育児に専念するために、一時的に仕事から離れることを目的としています。
そのため、原則として育休期間中に会社から指示されて働くことはできません。

しかし、引継ぎがうまくいかなかったり、急なトラブルが発生したりと、どうしても一時的に対応が必要なケースも考えられますよね。

そういった場合に備え、「例外的」に、労使の合意があれば一時的・臨時的に就業することが認められています。
あくまでイレギュラーな対応という位置づけです。

一方で、「産後パパ育休(出生時育児休業)」は、もっと柔軟な働き方を想定して作られた制度です。
こちらは、あらかじめ会社と従業員の間でルールを決めておけば、計画的に休業中に働くことが可能になっています。

この2つの違いが、とても重要なポイントです。

◆ ケース1:「産後パパ育休(出生時育児休業)」中の就業ルール

子の出生後8週間以内に最大4週間(28日)取得できる「産後パパ育休」。
この制度の大きな特徴が、休業中に一定の範囲内で就業できる点です。

「休業序盤は育児に集中して、少し落ち着いた後半に少しだけ仕事に復帰する」といった柔軟な働き方が可能になります。

就業するための条件

産後パパ育休中に就業するには、以下の手続きを段階的に踏む必要があります。

  1. 労使協定の締結 まず、会社として「産後パパ育休中の就業を認めますよ」というルールを、あらかじめ労使協定で定めておく必要があります。この協定がないと、従業員から希望があっても就業させることはできません。
  2. 従業員からの申出 休業を取得する従業員が、就業を希望する日や時間などの条件を会社に申し出ます。
  3. 会社からの提示と従業員の同意 会社は、従業員が申し出た条件の範囲内で、就業させる日や時間を提示します。その内容に従業員が同意して、初めて就業が決定します。

大切なのは、会社が一方的に就業を命じることはできないという点です。必ず従業員の合意が必要となります。

時間と日数の上限に注意!

柔軟に働けるとはいえ、上限なく働けるわけではありません。以下の2つの上限が定められています。

  • 就業日数の上限:休業期間中の所定労働日数の半分
  • 就業時間の上限:休業期間中の所定労働時間の半分

例えば、所定労働日が週5日(月~金)、1日8時間勤務の人が、10労働日間(2週間)の産後パパ育休を取得した場合、就業できるのは最大で「5日間」かつ「40時間」までとなります。

さらに、休業の開始日や終了日に就業する場合は、その日の所定労働時間未満でなければならない、という細かいルールもあります。

給付金はどうなる?

産後パパ育休中は、「出生時育児休業給付金」が支給されます。
この給付金をもらうためにも、就業時間には上限があります。

  • 休業中の就業日数が最大10日(10日を超える場合は就業時間が80時間)以下であること

この日数は、休業期間が最大の28日間の場合です。
もし休業期間が14日間であれば、就業可能な日数の上限もその半分(最大5日)となります。

上限を超えて働いてしまうと、給付金が全く支給されなくなってしまうので、厳密な勤怠管理が不可欠です。

◆ ケース2:「通常の育児休業」中の就業ルール

次に、原則として子が1歳になるまで取得できる「通常の育児休業」についてです。
こちらは産後パパ育休とは違い、制度として就業が予定されているわけではありません。

就業するための条件

就業の前提となるのは、「一時的・臨時的」な業務であることと、「労働者の合意」があることです。

  • どんなケース?
    • 後任への引継ぎがどうしても終わらない。
    • その人でなければ対応できないクレームやトラブルが発生した。
    • 月に一度の重要な会議にだけ出席してほしい。
  • 必要な手続き
    産後パパ育休と違い、事前の労使協定は必須ではありません。 その都度、会社と従業員の間で話し合い、合意することが求められます。 ただし、「言った・言わない」のトラブルを防ぐためにも、就業の日時や業務内容、賃金について合意書などの書面で残しておくことを強くお勧めします。

給付金はどうなる?

通常の育休中に支給される「育児休業給付金」にも、就業に関するルールがあります。

1ヶ月(支給単位期間)ごとに、

  • 就業日数が10日以下であること。
  • 10日を超える場合は、就業時間が80時間以下であること。

このいずれかの条件を満たす必要があります。もし、1ヶ月に11日かつ81時間働いてしまうと、その期間の育児休業給付金は支給されません。

また、就業して得た賃金の額によっては、給付金が減額されたり、支給停止になったりする場合があります。
賃金の計算も関わってくるため、給与計算を担当される方は特に注意が必要です。

Q&Aコーナー

Q1. 在宅勤務なら、会社に黙って働いてもバレませんか?

A1. 絶対にやめましょう。育児休業給付金は雇用保険から支給される公的な給付です。不正受給が発覚した場合、給付金の返還はもちろん、厳しいペナルティが課される可能性があります。就業する場合は、必ず会社のルールに従って、正しく申告・手続きを行ってください。

Q2. 育休中に、今の会社とは別の会社でアルバイト(副業)をしてもいいですか?

A2. 育児休業は、現在雇用されている会社との間で成立している制度です。その期間中に別の場所で働くことは、育児に専念するという休業の趣旨に反する可能性があります。また、会社の就業規則で副業が禁止されている場合もあります。まずは会社の担当者に相談し、許可を得ることが不可欠です。

【 まとめ】ルールを正しく理解し、安心して育休を取得しよう

今回は、育休中の就業について解説しました。

  • 産後パパ育休:労使協定と本人の同意があれば、計画的な就業が可能。ただし、日数や時間には上限がある。
  • 通常の育休:本人の同意があれば、一時的・臨時的な就業が可能。恒常的な就業はNG。
  • どちらの育休も:働きすぎると給付金がもらえなくなる可能性が!厳密な勤怠管理が重要。

育休中の就業は、従業員にとっては収入面の不安を和らげ、会社にとっては業務の円滑な引継ぎに繋がるというメリットがあります。
しかし、ルールは少し複雑です。

「うちの会社の場合はどうだろう?」「労使協定の作り方が分からない」など、具体的なご相談がありましたら、ぜひ私たち「社労士事務所ぽけっと」にお気軽にお声がけください。専門家の視点から、貴社に最適な労務管理をサポートさせていただきます。


【免責事項】
本記事は、2025年6月時点の法令等に基づき作成しております。法改正等により、内容が変更となる可能性がありますのでご留意ください。また、個別の事案については、必ず専門家にご相談いただきますようお願い申し上げます。