有給休暇の買取は原則NG!退職時ならOK?例外ケースと注意点を徹底解説

有給買取はNG! …とは限らない?

中小企業の経営者様、人事担当者の皆様、こんにちは!
社労士事務所ぽけっとです。

従業員の方から、「使わなかった有給、買い取ってもらえませんか?」あるいは「退職するので、残った有給を全部買い取ってほしい」といった相談を受けたことはありませんか?

「有給休暇をお金で解決できれば、人手不足の時も助かるんだけど…」
「退職する社員とのトラブルは避けたいし、どう対応するのが正解なんだろう?」

こんな風に、有給休暇の買取について悩まれるケースは少なくありません。

結論からお伝えすると、年次有給休暇の買取は原則として法律で認められていません。

しかし、いくつかの例外的なケースでは買取が認められることもあります。
知らずに対応してしまうと、思わぬ法律違反に繋がる可能性も。

そこで今回は、有給休暇の買取について、社労士が基本のルールから例外、注意点まで、分かりやすく徹底解説します。

そもそも、なぜ有給休暇の買取は原則NGなのか?

まず大前提として、年次有給休暇の買取は、労働基準法で禁止されています。

なぜなら、有給休暇の目的は「労働者の心身の疲労を回復させ、ゆとりある生活を保障するため」にあるからです。

お金を払うから休まなくていい、という制度になってしまうと、労働者は休みを取りづらくなり、本来の目的が果たせなくなってしまいます。
これを「年次有給休暇の趣旨に反する」と言います。

そのため、会社が従業員に対して「有給を買い取るから出勤してほしい」と持ちかけることはもちろん、従業員から「有給を買い取ってほしい」と申し出があったとしても、在職中に取得する権利のある有給休暇を買い取ることは違法となるのです。

【例外】有給休暇の買取が認められる3つのケース

原則はNGですが、例外的に有給休暇の買取が認められるケースが3つあります。
法律違反にならないよう、この3つのパターンをしっかり押さえておきましょう。

法律で定められた日数を超える部分の有給休暇

労働基準法で定められている年次有給休暇の日数(法定日数)を上回って、会社が独自に与えている休暇については、買い取っても問題ありません。
例えば、会社の就業規則で「法定日数にプラスして、毎年5日間の特別休暇を与える」と定めている場合、この追加の5日間については、労使の合意があれば買い取ることができます。
あくまで会社の福利厚生の一環として与えている休暇のため、法律の規制を受けない、という考え方です。

時効で消滅してしまう有給休暇

年次有給休暇の権利は、発生してから2年で時効により消滅します。
本来であれば時効になる前に使い切ることが望ましいですが、やむを得ず消滅してしまう休暇がある場合、これを買い取ることは「結果的にそうなった」ものとして、法律違反にはならないとされています。
ただし、これも予約的な買取はNGです。
「どうせ消滅するから」と、あらかじめ買取を前提とした制度を設けることは、有給休暇の取得を抑制することに繋がりかねないため、認められていません。
あくまで、時効成立後の事後的な対応としてのみ可能です。

退職時に未消化で残っている有給休暇

これが最もよくあるケースかもしれません。
退職日までに使いきれなかった有給休暇を、退職時に会社が買い取ることは認められています。
なぜなら、退職後は「労働者」ではなくなるため、有給休暇を取得する権利そのものが消滅してしまうからです。
権利が消滅した後の休暇をどう扱うかは、当事者間の自由な取り決めに委ねられる、という解釈になります。

【ここがポイント!】

退職時の買取は法律で義務付けられているわけではありません。
あくまで会社と従業員の双方の合意があって初めて成立します。
従業員から「残った有給を買い取ってほしい」と請求されても、会社側に支払う義務はありません。

しかし、引継ぎなどでどうしても出勤が必要な場合や、円満な退職を促すために、会社側から買取を提案することは有効な手段となり得ます。
トラブルを避けるためにも、退職が決まった従業員とは、残りの有給休暇をどう消化するか、買い取る場合はいくらで買い取るのかを、事前にしっかりと話し合っておくことが重要です。

Q&Aでスッキリ!有給買取のよくある疑問

Q1. 買取金額はどのように決めればいいの?

A1. 法律上の決まりはありません。当事者間の合意によって自由に決めることができます。一般的には、以下のいずれかの方法で計算することが多いです。

  • 通常の賃金(所定労働時間働いた場合に支払われる賃金)
  • 平均賃金
  • 健康保険の標準報酬日額

トラブルを避けるためにも、計算方法については就業規則に明記しておくか、個別に合意書を取り交わしておくことをお勧めします。

Q2. パート・アルバイトの有給も買い取れますか?

A2. はい、上記で説明した3つの例外ケースに該当すれば、正社員と同様にパート・アルバイトの有給休暇も買い取ることが可能です。対応に差を設ける必要はありません。

Q3. 会社独自の休暇(慶弔休暇など)の買取はOK?

A3. はい、問題ありません。法律で定められた年次有給休暇とは異なり、慶弔休暇やリフレッシュ休暇といった会社が独自に設けている「特別休暇(法定外休暇)」は、その取得条件や買取の可否などを、会社が自由に就業規則で定めることができます。

「未消化の特別休暇は、年度末に1日あたり〇〇円で買い取る」といったルールを設けておくことも可能です。

【まとめ】トラブルのない円満な労務管理のために

今回は、有給休暇の買取について解説しました。

  • 原則として、有給休暇の買取は違法
  • 例外的に「法定を超える分」「時効で消滅する分」「退職時に残った分」は買取OK
  • 買取は義務ではなく、労使の合意が必要
  • 会社独自の休暇の買取は、就業規則の定めによる

有給休暇の買取は、法律のルールを正しく理解した上で、慎重に進める必要があります。
特に退職時の対応は、従業員との信頼関係にも関わる重要なポイントです。

「うちの会社のケースはどうなんだろう?」
「就業規則の定め方について相談したい」
「退職する従業員との話し合いが不安…」

このようなお悩みや疑問がございましたら、ぜひお気軽に私たち社労士事務所ぽけっとにご相談ください。
専門家の視点から、それぞれの企業様に合った最適な解決策をご提案し、円満な労務管理をサポートいたします。


【免責事項】
本記事は、掲載時点の法令や情報に基づき作成しております。法改正等により、内容が変更となる場合がございます。また、個別の事案については、具体的な状況によって判断が異なる場合があります。本記事の情報を利用される際は、ご自身の責任においてご判断いただくか、専門家にご相談ください。