【第3/8回】扶養控除・特定親族特別控除-大学生に新制度!令和7年改正の重要ポイント

こんにちは!社労士事務所ぽけっとです。
令和7年分年末調整の解説、第3回は、お子様やご両親などを扶養している多くの方に関係する「扶養控除」についてです。
実はこの扶養控除、今回の税制改正で内容が複雑に変わるポイントです。2つの大きな変更点を、一つひとつ丁寧に見ていきましょう。
ポイント①:扶養に入れる年収の壁が「123万円」に!
まず、すべての扶養親族に共通する変更点です。
第2回で解説した配偶者控除と同様に、扶養に入れる親族の合計所得金額の上限が48万円から58万円に引き上げられます。
これにより、アルバイトをしているお子様や、年金収入のあるご両親などを扶養に入れる際の「年収の壁」が変わります。
【新しい扶養親族の壁の計算】
給与所得控除 65万円 + 新しい所得要件 58万円 = 123万円
つまり、お子様のアルバイト収入などが年収123万円までであれば、扶養親族として控除の対象にできる、ということになります。
これは分かりやすい改善点ですね。
ポイント②:【新設】19歳~22歳の大学生向け「特定親族特別控除」
こちらが今回の改正の目玉であり、最も複雑な新制度「特定親族特別控除」です。
これは、主に大学生のお子様がいるご家庭を支援するための制度です。
なぜこの制度ができたの?
これまでは、大学生のお子様のアルバイト収入が103万円を超えると、親が受けられる扶養控除(特定扶養控除63万円)がゼロになってしまい、世帯の手取りが急激に減るという問題がありました。
これにより、お子様がアルバイトを控えるといった事態が起きていました。
この問題を解消し、学生がもっと働けるようにするために、収入が増えても控除額がゆるやかに減っていく新しい仕組みが作られたのです。
【早見表】大学生(19歳~22歳)の子がいる場合の控除
言葉が似ていて紛らわしいですが、お子様の所得によって、親が受けられる控除の種類と、お子様自身の呼び方が変わります。
以下の表で整理しましょう。
お子様の合計所得金額 (給与年収の目安) | お子様の区分 | 親が受けられる控除 | 控除額(所得税) |
---|---|---|---|
58万円以下 (~123万円) | 特定扶養親族 | 扶養控除 | 63万円 |
58万円超~123万円以下 (123万円超~188万円) | 特定親族 | 特定親族特別控除 (新制度) | 所得に応じて変動 |
123万円超 (188万円超) | - | 控除なし | 0円 |
ポイントは、お子様の収入が123万円を超えても、すぐに控除がゼロになるわけではなく、新しい「特定親族特別控除」によって、ゆるやかに控除額が減っていく点です。
対象となる子の生年月日は?
この制度の対象となるのは、その年の12月31日時点で19歳以上22歳以下の親族です。
【生年月日】令和7年(2025年)の年末調整では、平成15年(2003年)1月1日から平成18年(2006年)12月31日までにお生まれのお子様が該当します。
この制度を利用するためには、年末調整で新しく設けられる「特定親族特別控除申告書」を提出する必要がありますので、対象となるお子様がいるご家庭は、必ずこの制度をチェックするようにしましょう。
【豆知識】学生自身の税金はどうなる?「勤労学生控除」とは
ここまで親が受けられる控除の話をしてきましたが、「学生本人の税金はどうなるの?」という疑問も湧きますよね。
そこで知っておきたいのが「勤労学生控除」です。
これは、働く学生自身が受けられる所得控除で、アルバイト先で年末調整をしてもらうか、自分で確定申告をすることで、所得税を安くすることができます。
令和7年からは、この勤労学生控除を受けられる所得の上限も引き上げられます。
- 対象者:合計所得金額が85万円以下(給与収入のみなら150万円以下)の学生
- 控除額:27万円
例えば、お子様のアルバイト収入が140万円の場合、親は新設の「特定親族特別控除」を受けられ、同時にお子様自身も「勤労学生控除」を使って自分の所得税を安くすることができます。
親子それぞれで控除を受けられる、と覚えておくと良いでしょう。
企業の人事・労務担当者が準備すべきこと
扶養控除の改正は、多くの従業員に関係し、質問も多くなることが予想されます。
- 2つの変更点を正確に伝える
「扶養の壁が123万円になること」「大学生向けに新制度が始まること」という2点を正確に周知しましょう。 - 新しい申告書への対応
「特定親族特別控除申告書」という新しい書類が増えます。配布や回収、チェック体制を今から準備しておくことが重要です。
まとめ
今回は、令和7年分年末調整で特に重要な「扶養控除」の改正点について解説しました。
- 扶養に入れる年収の壁が「103万円」→「123万円」にアップ!
- 【新設】19歳~22歳(大学生)向けに、収入の壁を緩和する「特定親族特別控除」がスタート!
- 学生自身も、年収150万円までなら「勤労学生控除」で税金が安くなる!
特にお子様がいるご家庭では、その年齢によって受けられる控除が大きく変わりますので、十分にご注意ください。
【補足】今後の注意点:令和8年からの変更について
なお、来年、令和8年分(2026年)の年末調整からは、児童手当の拡充に伴い、16歳~18歳(高校生年代)のお子様がいる方の扶養控除額が縮小される予定です。
今回の年末調整には直接関係ありませんが、来年以降の変更点として頭の片隅に置いておくと良いでしょう。
【免責事項】
本記事は、2025年8月時点の法令等に基づき作成されております。今後の法改正等により、内容が変更となる可能性があります。また、個別の税務相談等には応じかねますので、ご了承ください。正確な情報提供を心がけておりますが、本記事の内容に基づくいかなる行為についても、当事務所は一切の責任を負いかねます。