10月改定!あなたの会社の時給は大丈夫?社労士が教える「最低賃金」確認ポイントと実務対応

最低賃金UP!会社の対応、待ったなし

こんにちは!社労士事務所ぽけっとです。

毎年秋になると、必ず対応が必要になる法改正があります。
それが「最低賃金」の改定です。
今年も例年通り、2025年10月1日から多くの都道府県で新しい最低賃金額が適用されます。

「うちは時給の従業員はいないから関係ない」「毎年チェックしているから大丈夫」と思っている経営者様、人事担当者様も、ぜひ一度立ち止まってご確認ください。
特に、月給制の従業員の給与が、気づかないうちに最低賃金を下回ってしまうケースは少なくありません。

今回は、すべての会社に影響があるこの「最低賃金」について、確認すべきポイントと具体的な実務対応を、社会保険労務士の視点から分かりやすく解説します。

そもそも「最低賃金制度」とは?

最低賃金制度とは、国が賃金の最低額を定め、使用者はその金額以上の賃金を労働者に支払わなければならないとする制度です。
正社員、パート、アルバイトなど、すべての労働者に適用されます。

最低賃金には、各都道府県ごとに定められる「地域別最低賃金」と、特定の産業に従事する労働者に適用される「特定(産業別)最低賃金」の2種類があります。
両方が適用される場合は、高い方の金額を支払う必要があります。

毎年10月頃に改定されるのは、主に「地域別最低賃金」です。
自社の地域の最新情報は、厚生労働省のウェブサイトなどで必ず確認しましょう。

【最重要】自社の給与はクリアしてる?正しい確認方法

では、実際に自社の従業員の給与が最低賃金をクリアしているか、確認してみましょう。
時給制の場合と月給制の場合で、確認方法が異なります。

パターン1:時給制・日給制の従業員の場合

この場合は比較的シンプルです。

  • 時給制の場合
    「時間給 ≧ 最低賃金額(時間額)」であればOKです。
  • 日給制の場合
    「日給 ÷ 1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)」で確認します。

パターン2:月給制の従業員の場合

ここが最も注意が必要なポイントです。
以下の式で、月給を時間額に換算して確認します。

月給 ÷ 1ヶ月の平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)

この計算式には、2つの重要な注意点があります。

注意点①:計算に含める「月給」の範囲
最低賃金の計算対象となる賃金は、毎月支払われる基本的な賃金です。以下の手当は計算から除外しなければなりません。

  • 時間外労働手当、休日労働手当、深夜労働手当(残業代など)
  • 通勤手当、家族手当、精皆勤手当
  • 結婚手当など、臨時に支払われる賃金
  • 1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)

例えば、基本給と役職手当は含めますが、残業代や通勤手当は除外して計算する必要があります。

注意点②:「1ヶ月の平均所定労働時間」の計算
これは、就業規則で定められた年間の所定労働日数から計算します。
計算式: (365日 - 年間所定休日) × 1日の所定労働時間 ÷ 12ヶ月

「計算が複雑でよく分からない…」と感じた方もご安心ください。
こうした複雑な計算こそ、我々社労士がお手伝いできる分野です。

もし最低賃金を下回っていたら?

万が一、支払っている賃金が最低賃金を下回っていた場合、その契約は法律上無効となり、最低賃金と同額で契約したものとみなされます。
つまり、差額をさかのぼって支払う義務が生じます。

また、地域別最低賃金額以上の賃金を支払わない場合には、50万円以下の罰金が科せられる可能性もあり、会社にとって大きなリスクとなります。

賃上げを支援する「業務改善助成金」も活用しよう

「最低賃金が上がると、会社の負担が大きい…」と感じる経営者様もいらっしゃるかもしれません。
そんな時に活用を検討したいのが「業務改善助成金」です。

これは、事業場内で最も低い賃金(事業場内最低賃金)を一定額以上引き上げ、さらに生産性を向上させるための設備投資(機械設備の導入、コンサルティング導入など)を行った場合に、その費用の一部を助成する制度です。

単なる賃上げの負担だけでなく、会社の生産性を高めるチャンスとして、こうした制度を上手に活用することも重要です。

【まとめ】10月に向けて、早めの確認と準備を

今回は、10月に迫った最低賃金の改定について解説しました。
給与計算は、従業員の生活に直結する非常に重要な業務です。
法改正への対応が遅れると、未払い賃金の発生や従業員との信頼関係の悪化など、様々な問題に繋がりかねません。

まずは自社の給与体系を正しく見直し、新しい最低賃金に対応できるかを確認することから始めましょう。

「うちの会社の計算方法は合っている?」「業務改善助成金について詳しく知りたい」など、ご不明な点やご不安な点がございましたら、どんな些細なことでもお気軽に社労士事務所ぽけっとまでご相談ください。
貴社の状況に合わせた最適なサポートをさせていただきます。


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