【2025年版】10月の給与計算は要注意!最低賃金改定と社会保険料の変更点を社労士が解説

こんにちは!社労士事務所ぽけっとです。
企業の経営者様や人事・労務担当者の皆様、毎月の給与計算、お疲れ様です。
数ある業務の中でも、給与計算は従業員の生活に直結する非常に重要で、間違いの許されない業務ですよね。
特に10月の給与計算は、年に一度の重要な変更点が重なる「要注意」な月であることをご存知でしょうか?
「え、いつも通りじゃないの?」と思われた方こそ、ぜひこの記事を最後までお読みください。
今回は、2025年10月の給与計算で絶対に押さえておきたい3つの重要ポイントを、分かりやすく解説していきます。
ポイント1:【最重要】最低賃金の改定に対応できていますか?
10月の給与計算で最も注意すべきなのが「最低賃金の改定」です。
毎年10月1日を目途に、多くの都道府県で最低賃金が改定されます。
特に2025年度の最低賃金は、全国平均で63円と過去最大級の大幅な引上げが決定しており、例年以上に注意が必要です。
自社の従業員の時給が、改定後の最低賃金額を上回っているかを必ず確認してください。
特に、パートタイマーやアルバイトの従業員を多く雇用している場合は、一人ひとりの時給を念入りにチェックする必要があります。
最低賃金の確認方法
最低賃金は、都道府県ごとに金額が異なります。
本社と支社で所在地が違う場合は、それぞれの事業所が所在する都道府県の最低賃金が適用されます。
▶参考記事:【2025年10月改定】支店の最低賃金はどこを見る?本社と違う都道府県の事業所に適用されるルールを解説!
必ず、厚生労働省や各都道府県の労働局のホームページで最新の情報を確認しましょう。
月給者の場合はどう計算する?
月給者の場合も、最低賃金の対象となります。
以下の計算式で、時給に換算した金額が最低賃金を下回っていないか確認が必要です。
月給 ÷ 1年間における1ヶ月の平均所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
この計算から除外できる手当(通勤手当、家族手当、時間外手当など)もあるため、判断に迷った場合は専門家への相談をおすすめします。
より詳しい最低賃金のルールや計算方法については、こちらの記事で詳しく解説していますので、ぜひ併せてご覧ください。
もし、従業員の給与が改定後の最低賃金を下回っていた場合、差額を支払わなければ法律違反(最低賃金法違反)となり、罰則の対象となる可能性があります。
意図せず法律違反とならないよう、10月の給与計算前には必ず確認作業を行いましょう。
ポイント2:社会保険料(健康保険・厚生年金保険料)の変更
10月は、社会保険料が変更になるタイミングでもあります。
毎年4月〜6月の給与支払額をもとに、社会保険料の基準となる「標準報酬月額」の見直しが行われます。これを「定時決定」と呼びます。
この定時決定によって新しくなった標準報酬月額は、9月分の社会保険料から適用されます。
多くの企業では、社会保険料を「翌月控除(当月発生した保険料を翌月の給与から控除する)」方式にしているため、9月分の保険料は10月に支払われる給与から控除することになります。
【例:翌月控除の場合】
- 9月支払いの給与 → 8月分の社会保険料を控除(変更前の保険料)
- 10月支払いの給与 → 9月分の社会保険料を控除(変更後の新しい保険料)
9月下旬頃までに日本年金機構から「標準報酬月額決定通知書」が届きますので、その内容を給与計算ソフトに正確に反映させることが重要です。
昇給などで給与が上がった従業員は、社会保険料も上がっている可能性が高いので、特に注意して確認しましょう。
ポイント3:そろそろ年末調整の準備を始めましょう
少し気が早いように思われるかもしれませんが、10月は「年末調整」の準備を始めるのに最適な時期です。
年末調整には、従業員から「給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」などの書類を提出してもらう必要があります。
従業員数が多い場合、これらの書類を配布し、回収するだけでもかなりの時間がかかります。
10月のうちに以下の準備を進めておくと、慌ただしい11月〜12月の業務をスムーズに進めることができます。
- 年末調整の対象者を確認する
- 必要な申告書を準備し、従業員へ配布する(来年度の扶養控除等申告書も同時に配布すると効率的です)
- 従業員へ、生命保険料控除証明書などの準備を周知する
早めに準備を始めることで、書類の記入ミスや提出漏れにも余裕を持って対応できます。
特に、扶養家族の変更や住宅ローン控除の適用など、個別の事情がある従業員へのアナウンスは丁寧に行いましょう。
Q&A:10月の給与計算でよくある質問
Q1. 10月からの新しい最低賃金で計算するのを忘れ、10月分の給与を以前の時給で支払ってしまいました。どうすれば良いですか?
A1.気づいた時点ですぐに対応することが重要です。
これは「賃金の未払い」にあたるため、まず、本来支払うべきだった給与額との差額を正確に計算し、速やかに従業員へ追加で支払ってください。
その上で、今後の給与が新しい最低賃金を下回らないよう、給与計算システムの時給設定などを更新しましょう。
対応に不安がある場合は、労働基準監督署や社労士にご相談ください。
Q2. 6月に昇給があり、給与が大幅に上がりました。この場合、社会保険料はいつから変わりますか?月額変更(月変)の手続きは必要ですか?
A2. 非常に重要なご質問ですね。結論から言うと、このケースでは月額変更(月変)が定時決定(算定)に優先され、月額変更の手続きが必要になります。
6月に昇給があった場合、定時決定(4月・5月・6月の給与で計算)と月額変更(6月・7月・8月の給与で計算)の両方に該当する可能性があります。
この場合、月額変更が優先されるというルールがあります。
具体的には、6月の昇給により、6月・7月・8月に支払われた給与の平均額から算出した標準報酬月額が、これまでのものと比べて2等級以上差が生じた場合は、月額変更の対象となります。
この手続き(9月月変)を行うと、定時決定で決まった標準報酬月額は破棄(適用されない)され、月額変更で決まった新しい標準報酬月額が9月分の保険料(10月給与で控除)から適用されます。
たとえ算定基礎届を提出済みであっても、月額変更の条件を満たす場合は、速やかに月額変更届を提出する必要があるため注意が必要です。
【まとめ】10月の給与計算は事前の確認がカギ!
今回は、2025年10月の給与計算における3つの重要な注意点について解説しました。
- 【最重要】最低賃金の改定:自社の給与が新しい基準をクリアしているか必ず確認!
- 社会保険料の変更:標準報酬月額決定通知書の内容を正確に反映!
- 年末調整の準備開始:早めの準備で年末の業務負担を軽減!
10月は、これらの変更点が重なるため、いつも以上に慎重な確認作業が求められます。給与計算は、従業員との信頼関係の土台となる大切な業務です。
この記事が、皆様の正確な給与計算の一助となれば幸いです。
「自社での計算が合っているか不安…」「法改正が多くて対応しきれない…」など、給与計算や労務管理に関するお悩みは、ぜひ私たち社労士事務所ぽけっとにご相談ください。
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