【実務最優先】自動車通勤手当の非課税限度額改正で押さえるべき「3大アクション」とQ&A

通勤手当 非課税限度額改正! 年末調整で対応する 3つのポイント

給与計算ご担当者様、年末調整前の大変な時期にお疲れ様です!

この度、令和7年11月19日に政令が公布され、自動車などの交通用具を使用する従業員への通勤手当の「非課税限度額」が引き上げられました。
「また新しい改正が…」「年末調整どうすればいいの?」と、不安を感じていらっしゃるかもしれません。

ご安心ください。社労士事務所ぽけっとが、この改正で給与計算担当者様が取るべきアクションを、複雑な法規から切り離し、たった3つのポイントに絞り込んで解説します。

やるべきことはシンプルです。
年末調整をスムーズに乗り切るための、最優先チェックリストとしてぜひご活用ください!

1. 過去に遡って「課税額」の精算が必要なパターンを特定する

今回の改正は、「令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当」から適用されます。

  • 確認点: 令和7年4月1日以後(支給日ベース)に支払った給与のうち、旧限度額(改正前)を超過した部分を「課税対象」として源泉徴収していた従業員がいないか確認してください。
  • 該当する従業員がいた場合: その従業員は、結果として税金を払いすぎている状態です。この過去の課税分については、遡って給与計算をやり直す必要はありません。3項の「年末調整での精算」で対応します。

2. 今後の給与計算は「直ちに」新しい限度額を適用する

政令が公布・施行された後は、今後の給与計算についてすぐに新しい非課税限度額を適用する必要があります。

  • 対応: 令和7年11月、12月に支払う給与(支給日が4月1日以後であるもの)から、改正後の新しい非課税限度額を適用して源泉所得税を計算してください。
  • 影響: これにより、該当する従業員の源泉徴収額が減少し、手取り額が増える可能性があります。給与ソフトをご利用の場合は、最新のアップデートを適用し、非課税限度額が新しくなっていることを必ず確認してください。

3. 過去の過納付分は「年末調整」でまとめて精算する

令和7年4月1日以降に過大に徴収していた所得税は、年末調整で一括して調整されます。

  • 精算の対象: 令和7年4月1日以降支払われた給与のうち、旧限度額を超えて「課税」されていた通勤手当の合計額(=新たに非課税となった金額)です。
  • 実務上の処理: 年末調整の際、この「新たに非課税となった金額」を総支給金額から差し引いて、年末調整の計算を行います。
    • 例: 4月~10月の7ヶ月間で合計14,000円が新たに非課税となった場合、総支給金額から14,000円を差し引いて課税所得を計算します。
  • 結果: この調整により課税所得が減るため、過大に徴収されていた税金が還付金として従業員に戻されます。

よくある質問(Q&A)

Q1. 令和7年4月~10月分の給与計算を遡ってやり直す必要がありますか?

A. 遡って再計算を行う必要はありません。

令和7年4月1日以後に支払われた通勤手当で、旧限度額を超えて課税されていた分については、毎月の給与計算で税額を再計算する必要はありません。
その代わりに、令和7年分の年末調整の際に、過納付となった税金を一括して精算します。

Q2. 給与ソフトで「新たに非課税となった金額」の記載ができません。どうすれば良いですか?

A. 年末調整の結果が正しければ、記載は省略できます。

国税庁のQ&Aによると、源泉徴収簿の余白に「新たに非課税となった金額」やその計算根拠を記載できなくても、最終的に算出された年調年税額(年末調整の税額)が正しければ、その記載を省略しても差し支えありません
ソフトの指示に従って正確に計算することが最も重要です。

Q3. 改正前の非課税範囲内だった人に、差額を通勤手当として遡及支給した場合、精算は必要ですか?

A. 差額の追加支給として支払う場合でも、年末調整での確認・精算が必要です。

追加支給分も「令和7年4月1日以後に支払われるべき通勤手当の差額」に該当し、改正後の非課税限度額が適用されます
追加支給した額と既に支給した額の合計が、改正後の限度額を超えないかを確認し、年末調整で総支給金額を正しく調整する必要があります。

Q4. 年の途中で退職した従業員についても精算が必要ですか?

A. 課税通勤手当があった場合は、源泉徴収票の再交付が必要です。

年の中途で退職した従業員についても、令和7年4月1日以後に支払われた給与に、改正前の旧限度額を超えて課税されていた通勤手当がある場合は、その従業員が過納付の状態です。
会社は「支払金額」欄を訂正し、摘要欄に「再交付」と表示した源泉徴収票を作成し、再度交付する必要があります。
従業員は、この新しい源泉徴収票をもとに確定申告を行うことで、過納付分の税金が還付されます。


出典・参考資料

本記事は、以下の国税庁公表資料に基づき作成しています。
国税庁ホームページ: https://www.nta.go.jp/users/gensen/2025tsukin/index.htm

所得税法施行令の一部を改正する政令の公布(通勤手当の非課税限度額の引上げ)
通勤手当の非課税限度額の引上げに関するQ&A (令和7年11月 国税庁)


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