API連携の壁を突破!PDF分割と一括リネームで年末調整後の「隠れた事務負担」を解消する方法

こんにちは、社労士事務所ぽけっとです。
年末調整や給与計算の時期、人事担当者の皆様を悩ませるのがツール間のデータの受け渡しではないでしょうか。
「Aシステムから出したデータを、Bシステムが読み込める形式に整えるだけ」という作業に、数時間、あるいは数日奪われてしまうことも少なくありません。
今回紹介したいのは、源泉徴収票のPDFファイル名の問題です。
「ソフトからは全社員分が1つのPDFでしか出ない。でも配信ツールには【従業員番号】をファイル名にして1人ずつアップロードしなきゃいけない…」
そんなAPI連携がないツール同士の隙間を、無料ツールやAI(Gemini)を使ってスマートに埋める方法を具体的事例とともにご紹介します!
1. 今回解決する「現場の悩み」
【事例】
- 出力(ツールA): 源泉徴収票は全社員分がまとまった「1つのPDFファイル」としてしか出力できない。
- 配信(ツールB): 従業員マイページへ配信するため、ファイル名を「受給者番号@氏名.pdf」のように個別に指定してアップロードする必要がある。
API連携がない場合、これまでは「PDFを1ページずつ分割保存」し、「中身を見てファイル名を書き換える」という、気が遠くなるような手作業が必要でした。
2. 解決のための「2ステップ」
この問題を、以下の2つの技術で解決します。
- PDFの分割: 無料のオンラインツール「iLovePDF」や、インストール型のフリーソフト「CubePDF Page」などを使用。
- 一括リネーム: Google Apps Script(GAS)を使用。コードはAI(Gemini)に書いてもらいます。
3. 実践!自動化へのステップ
ステップ1:PDFを1ページずつに分ける
まずは、1つの大きなPDFをバラバラにします。
手軽に済ませたい場合は「iLovePDF」などのオンラインツールが便利ですが、セキュリティをより重視する場合は「CubePDF Page」のようなインストール型のソフトがおすすめです。
※セキュリティに関する注意点とツールの選び方
源泉徴収票には住所やマイナンバー(記載がある場合)など、極めて重要な個人情報が含まれます。
ツールの選定は企業のセキュリティポリシーに合わせて慎重に行いましょう。
- オンラインツール(iLovePDFなど)
ファイルを一時的に外部サーバーへアップロードして処理します。通信の暗号化や自動削除機能がありますが、社内規定で「外部サイトへの個人情報アップロード」が禁止されている場合は利用を控えましょう。 - インストール型ソフト(CubePDF PageやAdobe Acrobatなど)
お使いのPC内で処理が完結するため、データがインターネット経由で外部に送信されることがありません。機密性の高いデータを扱う給与事務においては、この「オフライン処理」が最も安全な選択肢となります。
ステップ2:AI(Gemini)にリネーム用コードを作らせる
ここがポイントです。 プログラミングの知識は不要ですが、実際にはGeminiと何度もやり取りを重ね、試行錯誤を経てようやく思い通りに動くコードが完成しました。
その経験を踏まえ、最後にGeminiから「最初からこの指示があれば一発だった」と太鼓判を押されたプロンプトをご紹介します。 ぜひ参考にしてください。
【Geminiへの指示(プロンプト)】
- やりたいこと:指定フォルダ(ID: xxxx)内の分割済みPDFを解析し、中身の「受給者番号」を使ってファイル名を一括変更したい。
- ファイル名のルール:「受給者番号@xxxx(任意の文字).pdf」
- 解析のヒント
- 受給者番号は〇桁の数字で、住所の記載のすぐ後、氏名の前のあたりに印字されています。
- OCR機能(Google Drive APIなど)を使って中身を読み取ってください。
- スクリプトの仕様:解析用に作成した一時的なドキュメントは削除する処理を入れてください。実行に必要な「サービス設定(API)」があれば手順も教えてください。
※このスクリプトは、PDFをGoogleドキュメントとして一時的に展開し、テキスト抽出(OCR)を行って番号を特定するという高度な処理を自動で行います。
ヒント:指定フォルダIDの確認方法 Googleドライブで対象のフォルダを開いたとき、ブラウザの検索バーに表示されるURLを確認してください。「folders/」の直後にある、英数字が不規則に並んだ長い文字列がフォルダIDです。この部分をコピーしてプロンプトの「xxxx」の部分に入れ替えましょう。
ステップ3:Google Apps Script(GAS)で実行
Geminiが作成したコードを動かすための具体的な手順を解説します。
【GAS実行の手順】
- GASエディタを開く: Googleドライブで「新規」>「その他」>「Google Apps Script」を選択します(見当たらない場合は「アプリを追加」から検索して追加してください)。
- コードを貼り付ける: エディタに最初から表示されている function myFunction() {...} をすべて消去し、Geminiが生成したコードをそのまま貼り付けます。
- サービスを追加する(重要): エディタ左側の「サービス」横にある「+」をクリックし、「Drive API」を選択して追加します。これを行わないとOCR機能が動作しません。
- 保存して実行する: 「プロジェクトを保存(フロッピーアイコン)」をクリックし、画面上部の「実行」ボタンを押します。
- 承認フローを進める: 初めて実行する際は「承認が必要です」という画面が出ます。「権限を確認」ボタンを押し、自分のアカウントを選択して、最後に「許可」をクリックしてください。
【もしエラーが発生したら? Geminiで解決する方法】
もし実行中に赤い文字でエラーメッセージが表示されても、慌てる必要はありません。以下の手順でGeminiに聞けば、すぐに解決策を教えてくれます。
- エラーメッセージをコピーする: GASの画面下部に表示されたエラー内容をそのままコピーします。
- Geminiに貼り付けて質問する: 「GASでエラーが出ました。エラー内容は『(コピーしたメッセージ)』です。貼り付けたコードのどこを直せばいいですか?」と、現在のコードと一緒にGeminiに投げてください。
- 修正案を試す: AIが修正版のコードを提案してくれるので、それをエディタに貼り直して再度実行するだけです。
Google Workspace環境であれば、これらの処理が社内のセキュリティ環境内で完結するため、機密データの扱いも安心です。
4. この方法のメリット
この仕組みを導入することで、これまで手作業で行っていた業務が劇的に効率化されます。
まず何より圧倒的な時短が実現し、たとえ100人分のリネーム作業であっても、実行ボタンを押して数分待つだけで完了します。
また、目視と手入力による「コピペミス」や「ファイルの取り違え」といったヒューマンリスクがなくなり、業務の正確性が格段に向上するのも大きな利点です。
さらに、高価な連携ツールを新たに導入する必要がなく、Google Workspaceなどの既存の環境だけでコストをかけずに実現できる点も、非常に魅力的です。
【まとめ】事務作業を「付加価値の高い仕事」へ
社労士事務所ぽけっとは、単に手続きを代行するだけの事務所ではありません。
こうした「現場の小さな不便」をテクノロジーで解決するDX支援も得意としています。
「この作業、もっと楽にならないかな?」 そんな疑問が、会社を強くするDXの第一歩です。
設定方法がわからない、もっと自社に合わせたカスタマイズをしたいという方は、ぜひお気軽に当事務所へご相談ください。
【免責事項】
本記事で紹介した外部ツールやスクリプトの利用は、自己責任にてお願いいたします。特にPDFのOCR読み取りは、フォントやレイアウトによって100%の精度を保証するものではありません。実行後は必ず数件のサンプルチェックを行うことを強く推奨します。また、個人情報の取り扱いについては貴社のセキュリティポリシーに従ってください。安全性を最優先する場合は、オフライン環境での分割作業や、社内の情報システム部門への確認を推奨します。

