新型コロナで傷病手当金はもらえる?4つの条件と申請方法を解説

急な休みも安心。新型コロナと傷病手当金の話

季節を問わず流行し、私たちの生活に大きな影響を与えている新型コロナウイルス感染症。
高熱や喉の痛み、倦怠感など、つらい症状で数日間寝込んでしまうことも少なくありません。
そんなとき、多くの方が心配になるのが「仕事を休んでいる間のお給料」ではないでしょうか。

特に、有給休暇が残り少なかったり、使い切ってしまったりすると、収入が減ってしまうことへの不安は大きいものです。

でも、ご安心ください。
会社の健康保険に加入している方であれば、新型コロナウイルス感染症による休みでも「傷病手当金」を受給できる可能性があります。

この記事では、新型コロナで傷病手当金をもらうための具体的な条件や手続きの流れ、よくある質問について、専門用語をなるべく使わずに分かりやすく解説します。
経済的な不安を少しでも軽くして、安心して療養に専念するためにも、ぜひ最後までお読みください。

そもそも「傷病手当金」とは?

まずは、傷病手当金がどのような制度なのか簡単にご説明します。

傷病手当金とは、健康保険の被保険者(本人)が、業務外の病気やケガのために仕事を休み、お給料がもらえないときに、本人とその家族の生活を保障するために設けられた制度です。

文字通り、病気やケガで「傷(しょう)」を負ったときに支給される「手当金」とイメージすると分かりやすいかもしれません。
お給料が全額補償されるわけではありませんが、収入が途絶えてしまう期間の生活を支える、とても心強いセーフティーネットなのです。

新型コロナで傷病手当金をもらうための「4つの条件」

新型コロナで傷病手当金を受給するためには、次の4つの条件をすべて満たす必要があります。
一つずつチェックしていきましょう。

条件1:業務外の病気やケガの療養のための休みであること

傷病手当金は、仕事以外の原因による病気やケガが対象です。
新型コロナウイルス感染症は、日常生活の中で感染することがほとんどですので、この条件に当てはまります。

(もし、医療機関での勤務など、業務中に感染したことが明らかな場合などは、労働災害(労災)として扱われる可能性もあります。その場合は傷病手当金ではなく、労災保険の休業補償給付の対象となります。)

条件2:仕事に就くことができない状態(労務不能)であること

「仕事に就くことができない」という状態は、自分で判断するのではなく、医師が「労務不能」と判断していることが重要です。

新型コロナの場合、医師から「〇月〇日まで自宅で療養してください」といった指示があるはずです。
この、医師の指示による療養期間が「労務不能」な期間と認められます。

条件3:連続する3日間を含み、4日以上仕事を休んでいること

これが少し分かりにくいポイントです。
傷病手当金には「待期期間」というものがあります。

仕事を休み始めた日から連続した3日間を「待期期間」といい、この期間は傷病手当金が支給されません。
そして、4日目の休みからが支給対象となります。

この最初の3日間は、有給休暇、土日祝日、欠勤など、休み方の種類は問いません。
とにかく「連続して3日間」休んでいることが必要です。

例えば、水曜日に新型コロナと診断され、水・木・金と3日間休んだ場合、この3日間が待期期間となります。
そして、さらに土日を挟んで月曜日も休んだ場合、4日目にあたる土曜日からが支給対象となります。(※会社の所定休日も対象です)

条件4:休んだ期間について、給与の支払いがないこと

傷病手当金は、生活保障のための制度です。
そのため、休んだ期間に対して会社からお給料が支払われている場合は、支給されません。

ただし、例外があります。
お給料が支払われたとしても、その額が傷病手当金の額よりも少ない場合は、その差額分が支給されます。

有給休暇を取得した日は、お給料が支払われるため、傷病手当金の支給対象外となります。
しかし、待期期間の3日間に有給休暇を充てることは可能です。

【具体例】いつから、いくらくらいもらえるの?

では、実際にどれくらいの金額がもらえるのでしょうか。
計算式は少し複雑ですが、ざっくり言うと「直近1年間のお給料の平均額の約3分の2」が目安です。

正確な計算式は以下の通りです。
【1日あたりの支給額】
支給開始日以前の継続した12ヶ月間の各月の標準報酬月額を平均した額 ÷ 30日 × 2/3

言葉だと難しいので、簡単なモデルケースで見てみましょう。

【モデルケース】
・休み始める前12ヶ月間の標準報酬月額の平均額:30万円
・水曜日から翌週の火曜日まで、合計7日間仕事を休んだ
・休み方:水(欠勤), 木(欠勤), 金(欠勤), 土(公休), 日(公休), 月(有給), 火(有給)

① 1日あたりの支給額を計算
300,000円 ÷ 30日 × 2/3 = 約6,667円

② 待期期間を確認
水・木・金の連続3日間で待期期間が完成します。

③ 支給対象となる日数を確認
4日目以降の休みは、土・日・月・火の4日間です。
このうち、給与の支払いがないのは土曜日と日曜日です。(月・火は有給休暇のため対象外)
よって、支給対象日数は2日間となります。

④ 支給総額を計算
約6,667円 × 2日間 = 13,334円

このケースでは、約13,334円が傷病手当金として支給されることになります。

傷病手当金の申請手続きの流れ

「条件は分かったけど、どうやって申請すればいいの?」という方のために、申請手続きの一般的な流れを解説します。

  1. 会社(人事・総務担当者)に連絡・相談する
    まずは、「新型コロナで休むため、傷病手当金を申請したい」という旨を会社の担当者に伝えましょう。
    必要な書類や手続きの流れを案内してくれます。
  2. 「傷病手当金支給申請書」を入手する
    申請書は、会社の担当者からもらうか、ご自身が加入している健康保険組合(協会けんぽなど)のウェブサイトからダウンロードできます。
  3. 申請書を作成する
    申請書は、通常4枚綴りになっており、以下の3者が記入する欄があります。
    本人(被保険者)が記入するページ
    会社(事業主)が勤務状況や給与の支払い状況を証明するページ
    医師が病状や労務不能と認めた期間を証明するページ
  4. 健康保険組合に提出する
    すべての記入が終わったら、会社経由、またはご自身で直接、健康保険組合に申請書を提出します。

ポイントは、医師に記入してもらうページがあることです。
症状が落ち着いてから慌てないように、療養期間中に申請の準備を始めておくとスムーズです。

新型コロナの傷病手当金に関するQ&A

Q. パートやアルバイトでももらえますか?

A. はい、もらえます。
雇用形態にかかわらず、会社の健康保険に加入していれば対象となります。

Q. 入社して1年未満でも、傷病手当金はもらえますか?

A. はい、もらえます。
入社から休み始めるまでの期間が12ヶ月に満たない場合は、計算方法が少し異なります。
次の①と②のどちらか低い方の金額を使って、1日あたりの支給額を計算します。

①入社してから休み始めるまでの、実際の標準報酬月額の平均額

②ご自身が加入している健康保険組合(協会けんぽ等)の、全加入者の標準報酬月額の平均額(※)
※令和7年3月31日までの支給開始日の場合は30万円。年度によって変わることがあります。

    Q. 後遺症で長引いた場合も対象になりますか?

    A. はい、対象となる可能性があります。
    後遺症の療養であっても、医師が「仕事に就けない状態(労務不能)」と判断している期間については、最初に新型コロナで休んだ時と同じように傷病手当金を申請できます。
    具体的には、後遺症で休んでいる期間についても、以下の条件を満たしていることが必要です。

    • 業務外の療養であること
    • 連続3日間の待期期間がすでに完成していること(最初の療養で完成していればOKです)
    • 後遺症で休んでいる期間について、会社から給与が支払われていないこと

    Q. 申請してから、いつ頃お金は振り込まれますか?

    A. 提出された申請書を元に審査が行われるため、一般的には申請から1ヶ月~2ヶ月程度かかります。

    Q. 申請に期限はありますか?

    A. はい、あります。労務不能であった日ごとに、その翌日から2年を過ぎると時効で申請できなくなります。休みが終わったら、なるべく早く申請しましょう。

    【まとめ】不安な時はまず相談を。安心して療養しましょう。

    今回は、新型コロナウイルス感染症で仕事を休んだ際の傷病手当金について解説しました。

    【本日のまとめ】

    • 新型コロナでも4つの条件を満たせば傷病手当金はもらえる!
    • ポイントは「連続3日間の待期期間」と「4日目以降の休み」
    • もらえる額は、お給料の約3分の2が目安
    • 手続きには医師と会社の証明が必要。早めに準備を始めよう!

    新型コロナの症状もつらい中、お金の心配まで重なると、心身ともに大きな負担となります。
    傷病手当金は、そんな時に私たちの生活を守ってくれる大切な制度です。

    「自分は対象になるのかな?」「手続きが難しそう…」と一人で悩まず、まずは会社の担当者に相談してみてください。
    もちろん、私たち社会保険労務士事務所ぽけっとでも、労務に関する様々なご相談に応じております。
    どうぞお気軽にお問い合わせください。

    何よりも大切なのは、あなたの健康です。経済的な不安は専門家に任せて、今はゆっくりと体を休めることに専念してくださいね。


    【免責事項】
    当記事は、2025年8月時点の情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成しております。個別の事案については、必ずしもこの記事の内容が適用されるわけではございません。申請にあたっては、ご加入の健康保険組合や管轄の行政機関にご確認いただきますようお願い申し上げます。当記事の情報を利用した結果生じた損害について、当事務所は一切の責任を負いかねます。