その勤怠設定、本当に自社に合っていますか?

知らないと損?自社に合う勤怠設定の見つけ方

こんにちは!社労士事務所ぽけっとです。

企業の経営者様や人事ご担当者様とお話ししていると、「勤怠管理システムの導入や設定で頭を悩ませている」というお声をよく耳にします。
特に、一日の労働時間をどのように集計するかという基本的な設定は、給与計算に直結する非常に重要なポイントです。

今回は、勤怠管理ツールにおける集計設定の違いが、日々の様々な勤務パターンにおいて給与計算にどう影響するのかを、具体的なケースを交えながら分かりやすく解説します。

【この記事での解説の前提】

この記事では、会社の基本的な勤務時間を以下と定めた場合を例として解説を進めます。
・所定の始業・終業時刻:9:00~18:00(休憩1時間)
・1日の所定労働時間:8時間

所定労働時間の集計、2つのパターンとは?

勤怠管理ツールにおける所定労働時間の集計方法には、主に2つのパターンがあります。
この2つの違いは、「どの時間帯を『所定労働時間』として扱い、それ以外の時間をどう集計するか」という点にあります。

① 所定労働時間に基づいて集計する(スライド勤務のような考え方)
② 所定の始業・終業時刻に基づいて集計する(固定勤務の考え方)

※ツールの設定項目名は様々ですが、考え方はこの2つに大別されます。

①「所定労働時間」に基づいて集計するパターン

これは、「1日8時間」という所定労働時間数を基準に集計する方法です。
このパターンでは、労働の開始時刻は実際の打刻時間に準じます。
例えば、8:30に出勤打刻をした場合、そこから8時間(+休憩1時間)後の17:30までが所定労働時間として扱われます。

  • メリット:従業員は始業時刻をある程度柔軟に調整できる。実態に即した労働時間管理が可能。
  • デメリット:日によって所定労働時間の時間帯が変動するため、勤怠管理がやや複雑になる可能性がある。

②「所定の始業・終業時刻」に基づいて集計するパターン

こちらは、会社が定めた「9:00~18:00」という固定の枠を基準に集計する方法です。
この設定では、所定の始業時刻(9:00)より前に労働した場合、その時間は「法定内残業」または「時間外労働」として集計されます。
そして、9:00から18:00までが「所定労働時間」となります。

  • メリット:勤務時間が固定されているため、時間帯ごとの管理がしやすい。
  • デメリット:「所定内労働」「法定内残業」「時間外労働」など、勤怠項目が細分化されるため、それぞれの定義や割増率について就業規則で明確に定める必要があり、給与計算のルールが複雑になる。

【ケース別】集計結果はこう変わる!

それでは、様々な勤務パターンで、集計結果がどう変わるかを見てみましょう。

勤務パターン
(打刻時間)
①の集計結果
(所定労働時間ベース)
②の集計結果
(所定時刻ベース)
定時勤務
(9:00-18:00)
・所定内労働: 8時間
・残業: 0分
・所定内労働: 8時間
・残業: 0分
遅刻
(9:30-18:00)
・所定内労働: 7.5時間
・遅早控除: 30分
・所定内労働: 7.5時間
・遅早控除: 30分
早退
(9:00-17:00)
・所定内労働: 7時間
・遅早控除: 1時間
・所定内労働: 7時間
・遅早控除: 1時間
中抜け
(9:00-18:00
うち休憩 12:00-15:00)
・所定内労働: 6時間
・遅早控除: 2時間
・所定内労働: 6時間
・遅早控除: 2時間
早出
(8:30-18:00)
・所定内労働: 8時間
 (8:30-17:30)
時間外労働: 30分
 (17:30-18:00)
・所定内労働: 8時間
 (9:00-18:00)
時間外労働: 30分
残業
(9:00-18:30)
・所定内労働: 8時間
時間外労働: 30分
・所定内労働: 8時間
時間外労働: 30分
早出+残業
(8:30-18:30)
・所定内労働: 8時間
 (8:30-17:30)
時間外労働: 1時間
 (17:30-18:30)
・所定内労働: 8時間
 (9:00-18:00)
時間外労働: 1時間
遅刻+残業
(9:30-18:30)
・所定内労働: 8時間
・残業: 0分
・所定内労働: 7.5時間
・遅早控除: 30分
法定内残業: 30分
中抜け+残業
(9:00-19:30
うち休憩 12-13, 16-17)
・所定内労働: 8時間
時間外労働: 30分
・所定内労働: 7時間
・遅早控除: 1時間
法定内残業: 1時間
時間外労働: 30分

※遅刻、早退、中抜けによる労働時間の不足分は、まとめて「遅早控除」として表記しています。

→ 早出や中抜け、遅刻が絡む勤務で、労働時間の「内訳」が大きく変わることが分かります。

【まとめ】自社の運用ルールに合った、正しい設定を

ここまで見てきたように、勤怠の集計設定は、単なる「ツールの機能」ではなく、会社の労務管理の根幹に関わる重要な選択です。

①「所定労働時間」に基づく集計(スライド式)は、従業員の柔軟な働き方を認めつつ、実態に即した労働時間管理を行いたい会社に向いています。

一方で②「所定の始業・終業時刻」に基づく集計(固定式)は、会社の定めるコアタイムを明確にしたい場合に有効です。
ただし、この設定を採用する場合は、「法定内残業」と「時間外労働」の割増率の違いなど、給与計算のルールを就業規則で明確に定め、正しく運用する必要があります。

最も重要なのは、選択した集計方法と、会社の「就業規則」や実際の運用ルールが一致していることです。

「自社の設定はどちらになっているだろう?」
「今の運用ルールで問題はないだろうか?」

もし少しでも不安に思われたら、どうぞお気軽に社労士事務所ぽけっとまでご相談ください。貴社の働き方に合った、安全で正しい勤怠管理の仕組みづくりを、専門家の視点からサポートさせていただきます。


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