【2025年最新】あなたの会社の給与は大丈夫?月給者の最低賃金チェック方法を社労士が徹底解説!

こんにちは!社労士事務所ぽけっとです。
最近、「最低賃金が過去最高の引き上げ!」といったニュースをよく目にしませんか?
毎年10月頃に改定される最低賃金ですが、自社の給与設定がこの基準をクリアしているか、きちんと確認できていますでしょうか。
「うちは月給制だから大丈夫」「時給のパートさんだけ気をつければいいんでしょ?」と思っている経営者や人事担当者の皆さま、実はそこに大きな落とし穴があるかもしれません。
時給制の従業員は時給額を比べるだけなので分かりやすいですが、月給制の従業員の場合は少し複雑な計算が必要になります。
手当の種類によっては最低賃金の計算に含めないものもあり、気づかないうちに最低賃金を下回ってしまう「うっかり違反」が起こりやすいポイントなのです。
そこで今回は、月給者の給与が最低賃金を下回っていないかを確認する方法について、社労士が分かりやすく徹底解説します!
この記事を読めば、誰でも簡単に自社の賃金チェックができるようになります。ぜひ最後までご覧ください。
そもそも「最低賃金制度」とは?
まずは基本のおさらいです。
最低賃金制度とは、国が法律(最低賃金法)に基づき、賃金の最低額を定める制度のことです。
企業は、その金額以上の賃金を従業員に支払わなければなりません。
もし、企業と従業員が合意の上で最低賃金額より低い賃金で契約を結んだとしても、その契約は法律上無効となり、企業は最低賃金額と同額の賃金を支払う義務があります。
万が一、最低賃金額以上の賃金を支払わなかった場合、50万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
「知らなかった」では済まされない、非常に重要なルールなのです。
【給与形態別】最低賃金の確認方法
それでは、具体的に給与が最低賃金を上回っているかを確認する方法を見ていきましょう。
給与形態によって確認方法が異なります。
時給制の場合
時給制の場合は非常にシンプルです。
時間給 ≧ 最低賃金額(時間額)
上記の式が成り立っていればOKです。例えば、お住まいの地域の最低賃金が920円の場合、時給950円で雇用していれば問題ありません。
日給制の場合
日給制の場合は、日給を1日の所定労働時間で割って時間額を算出し、最低賃金額と比較します。
日給 ÷ 1日の所定労働時間 ≧ 最低賃金額(時間額)
※ただし、日額が定められている特定最低賃金が適用される場合は、「日給 ≧ 最低賃金額(日額)」で比較します。
月給制の場合【ここが重要ポイント!】
さて、今回の本題である月給制の場合です。月給を時給に換算して比較しますが、ここで注意が必要です。
月給の全てが最低賃金の計算対象になるわけではありません。
計算手順は以下の3ステップです。
- ステップ1:最低賃金の対象となる賃金を把握する
- ステップ2:月給から対象外の賃金を差し引く
- ステップ3:時間額に換算して最低賃金額と比較する
ステップ1&2:最低賃金の対象になる手当・ならない手当
まず、月給に含まれる各種手当を「最低賃金の計算対象になるもの」と「ならないもの」に仕分ける必要があります。
法律で対象外となる手当が定められています。
以下の表で分かりやすく整理しました。
自社の給与明細と見比べてみてください。
対象になる賃金の例 | 対象にならない賃金の例 |
---|---|
基本給 職務手当 役職手当 資格手当 調整手当 地域手当 ※名称に関わらず、毎月決まって支払われる固定的な手当が対象です。 | 時間外・休日・深夜労働の割増賃金(残業代など) 通勤手当(交通費) 家族手当精皆勤手当(無遅刻無欠勤の場合に支給される手当) 賞与(ボーナスなど、1ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金) 臨時に支払われる賃金(結婚手当、出産手当など) |
特に見落としがちなのが、「精皆勤手当」「通勤手当」「家族手当」です。
これらは毎月支払われることが多いですが、福利厚生的な意味合いが強いことから、最低賃金の計算からは除外されます。
この3つの手当を計算に含めてしまい、気づかぬうちに最低賃金違反となっているケースが非常に多いので注意しましょう。
ステップ3:時間額に換算して比較する
対象となる賃金を整理できたら、いよいよ計算です。
以下の式で時間額を算出し、最低賃金額と比較します。
(月給のうち最低賃金の対象となる賃金の合計額) ÷ (年間における1ヶ月平均の所定労働時間) ≧ 最低賃金額(時間額)
「年間における1ヶ月平均の所定労働時間」は、就業規則などで定められた年間の総所定労働時間を12ヶ月で割って算出します。
(365日 - 年間休日数) × 1日の所定労働時間 ÷ 12ヶ月
【具体例】で計算してみよう!
言葉だけだと難しいので、具体的なモデルケースで計算してみましょう。
《モデルケース》
- 地域別最低賃金:920円と仮定
- 年間休日数:120日
- 1日の所定労働時間:8時間
- 給与(月給):200,000円
- 基本給:160,000円
- 職務手当:10,000円
- 家族手当:10,000円
- 通勤手当:5,000円
- 精皆勤手当:5,000円
- 時間外手当:10,000円
① まず、1ヶ月平均の所定労働時間を計算します。
(365日 - 120日) × 8時間 ÷ 12ヶ月 = 163.333...時間 ≒ 163.34時間
② 次に、月給から最低賃金の対象にならない手当を引きます。
対象になるのは「基本給」と「職務手当」のみです。
160,000円(基本給) + 10,000円(職務手当) = 170,000円
③ 最後に、時間額を算出して最低賃金と比較します。
170,000円 ÷ 163.34時間 = 1040.77...円 ≒ 1,041円
【結論】
算出した時間額1,041円は、地域の最低賃金920円を上回っているため、セーフです。
もし、対象にならない手当を誤って含めて計算してしまうとどうなるでしょうか。200,000円 ÷ 163.34時間 = 1224.44...円
となり、実際よりもかなり高い金額になってしまいます。これでは正確なチェックはできません。
【まとめ】定期的な賃金チェックで健全な会社経営を!
今回は、月給者の最低賃金確認方法について詳しく解説しました。
ポイントは、「対象になる手当・ならない手当を正しく仕分けること」です。
最低賃金は毎年改定される可能性があります。
一度確認したからといって安心せず、毎年10月の改定時期には必ず自社の給与を見直す習慣をつけましょう。
従業員が安心して働ける環境を作ることは、会社の成長にとって不可欠です。
法令を遵守し、健全な労務管理を心がけましょう。
「うちの計算、本当に合っているか不安…」「就業規則の所定労働時間の定め方から見直したい」など、ご不明な点やご不安なことがあれば、いつでも私たち専門家にご相談ください。
社労士事務所ぽけっとが、サポートさせていただきます。
【免責事項】
この記事は、2025年8月時点の情報に基づき作成しております。法改正等により内容が変更される可能性がありますので、最新の情報をご確認ください。また、個別の事案については、必ず専門家にご相談いただきますようお願いいたします。本記事の情報を利用した結果生じた損害について、当事務所は一切の責任を負いかねます。