【2025年10月改定】支店の最低賃金はどこを見る?本社と違う都道府県の事業所に適用されるルールを解説!

企業の経営者様、人事労務のご担当者様、こんにちは。
社労士事務所ぽけっとです。
毎年10月頃に改定される最低賃金。
今年も2025年10月に新たな金額が適用される見込みです。
全国に支店や事業所を展開されている企業様から、この時期によくいただくご質問があります。
「本社は東京だけど、大阪と福岡に支店がある。どの都道府県の最低賃金に合わせればいいの?」
結論から申し上げますと、「本社ではなく、それぞれの支店(事業所)がある都道府県の最低賃金を適用する」のが正解です。
今回は、意外と知らない最低賃金の適用ルールと、もう一つの最低賃金である「特定(産業別)最低賃金」について、分かりやすく解説していきます。
大原則!最低賃金は「事業所のある都道府県」で決まる
最低賃金法では、労働者が実際に働いている事業所の所在地がある都道府県の最低賃金が適用されると定められています。
たとえ本社が東京にあっても、大阪支店で働く従業員には大阪府の、福岡支店で働く従業員には福岡県の最低賃金がそれぞれ適用されます。
当たり前のように聞こえるかもしれませんが、給与計算を本社で一括して行っている場合、うっかり本社の最低賃金だけで確認してしまうミスが起こりがちです。
2025年10月の改定に向けて、自社の全事業所のリストアップと、それぞれの都道府県の最低賃金額の確認を必ず行いましょう。
【例】
- 本社:東京都 → 本社勤務の従業員には東京都の最低賃金を適用
- 大阪支店:大阪府 → 大阪支店勤務の従業員には大阪府の最低賃金を適用
- 福岡営業所:福岡県 → 福岡営業所勤務の従業員には福岡県の最低賃金を適用
【補足】リモートワーク(在宅勤務)の場合の適用ルール
近年増えているリモートワークですが、この場合はどう考えればよいのでしょうか。
原則として、そのリモートワーカーの所属や勤怠管理、業務指示を行っている事業所がある都道府県の最低賃金が適用されます。
例えば、従業員の自宅が埼玉県にあっても、所属先が東京本社で、勤怠管理や業務の指示をすべて東京本社から受けている場合は、「東京本社の事業所で働いている」と見なされ、東京都の最低賃金が適用されることになります。
もう一つの最低賃金、「特定(産業別)最低賃金」とは?
最低賃金には、都道府県ごとに定められる「地域別最低賃金」の他に、特定の産業を対象とした「特定(産業別)最低賃金」が存在することをご存知でしょうか。
これは、特定の産業について、地域別最低賃金よりも高い水準の最低賃金を定める必要があると認められた場合に設定されるものです。
例えば、「鉄鋼業」や「機械器具製造業」など、専門的な技術が必要な産業で設定されていることが多いです。
地域別と特定、どちらを適用する?
では、自社が特定最低賃金の対象産業だった場合、地域別最低賃金とどちらを適用すればよいのでしょうか。
答えはシンプルで、「両方を比較して、高い方の金額を適用する」となります。
重要:地域別最低賃金 ≦ 従業員の賃金 AND 特定最低賃金 ≦ 従業員の賃金
両方の基準をクリアしている必要があります。
毎年10月に改定される地域別最低賃金が、その時点で設定されている特定最低賃金を上回るケースも少なくありません。
その場合は、より高い金額である地域別最低賃金が適用されます。
自社が特定最低賃金の対象産業かどうかは、厚生労働省のホームページや、管轄の労働局で確認できます。こちらも忘れずにチェックしましょう。
【ミニコラム】最低賃金はどうやって決まるの?
毎年夏になるとニュースになる最低賃金の改定。
実は、次のようなプロセスを経て金額が決定されています。
- 【国の審議会】目安を示す(7月下旬頃)
まず、厚生労働省の審議会が全国的な経済状況をふまえ、引き上げ額の「目安」を提示します。- 【地方の審議会】答申を行う(8月中旬頃)
国の目安を参考に、各都道府県の審議会が地域の実情に合わせて具体的な金額案をまとめ、労働局長に「答申」します。- 【都道府県労働局】決定・発効(9月〜10月)
答申された金額案について、異議申し立てなどを経て、最終的に都道府県の労働局長が「決定」します。
そして10月1日から順次「発効」となります。この記事を公開している9月1日時点では、ほとんどの都道府県でステップ②の答申が出揃い、これから最終的な「決定」がなされる段階です。
2025年10月の改定に向けて今から準備すべきこと
最低賃金の引き上げは、人件費に直接影響します。
特に、パートタイマーやアルバイト、新入社員など、最低賃金に近い時給で雇用している従業員が多い場合は、早めの対策が必要です。
- 全事業所の所在地の確認
まずは、自社の支店や営業所がどの都道府県にあるかを正確に把握します。 - 賃金台帳の確認
全従業員の現在の賃金額を確認し、新しい最低賃金を下回る可能性のある従業員をリストアップします。 - 対象産業の確認
自社が特定最低賃金の対象産業に該当するかどうかを確認します。 - 資金計画の見直し
最低賃金の引き上げに伴う人件費の増加額を試算し、資金計画に反映させます。
直前になって慌てないためにも、今のうちから計画的に準備を進めることが大切です。
【まとめ】正しい知識でミスのない給与計算を
今回は、複数事業所がある場合の最低賃金の適用ルールについて解説しました。
- 最低賃金は、本社ではなく「実際に働く事業所の都道府県」のものを適用する。
- 「地域別最低賃金」と「特定最低賃金」を比較し、高い方の金額を適用する。
- 2025年10月の改定に向け、早めに現状把握とシミュレーションを行う。
最低賃金は、従業員の生活を守るための大切なルールです。
意図せず法律違反となってしまうことがないよう、正しい知識を身につけましょう。
給与計算や労務管理に関して、少しでもご不安な点やご不明な点がございましたら、いつでも私たち社労士事務所ぽけっとにご相談ください。専門家の視点から、貴社に最適なサポートをさせていただきます。
【免責事項】
本記事は、2025年9月1日時点の情報に基づき作成しております。法改正などにより、掲載内容が変更となる可能性がございます。記事の内容の正確性には万全を期しておりますが、特定の目的への適合性、完全性を保証するものではありません。本記事の情報を用いて行う一切の行為について、当事務所は何ら責任を負うものではありませんので、ご了承ください。