離職証明書の基礎日数、正しく数えられていますか?有休・休日出勤・休業時の数え方を社労士が徹底解説!

中小企業の経営者様、人事ご担当者様、こんにちは!
社労士事務所ぽけっとです。
従業員の方が退職される際、作成が必要になる「離職証明書」。
特に「基礎日数」のカウントは、失業手当の受給資格にかかわる非常に重要な項目です。
「有給休暇って基礎日数に含めるんだっけ?」
「月給と時給で数え方は違うの?」
「うちの会社は日給月給だけど、どう考えればいい?」
など、いざ作成する段階になって数え方に迷ってしまった経験はございませんか?
実はこの基礎日数のカウント、間違えてしまうと退職後の従業員の生活に直接影響を与えてしまう可能性があり、トラブルの原因にもなりかねません。
そこで今回は、離職証明書の基礎日数の数え方について、給与形態の違いや様々なケースを挙げながら分かりやすく徹底解説していきます!この記事を読めば、もう基礎日数のカウントで迷うことはありません。
ぜひ最後までご覧ください。
そもそも「基礎日数」とは?
まず、基本の考え方から押さえましょう。
離職証明書における「基礎日数」とは、「賃金の支払いの対象となった日数」を指します。
基本的には、その期間中に出勤した日数がベースになります。
しかし、給与形態や休暇の扱いによって数え方が変わるため、単純な出勤日数だけではないのが難しいポイントです。
原則は「給料が支払われる日かどうか」で判断すると覚えておきましょう。
【給与形態別】基礎日数カウントの基本原則
基礎日数の考え方は、従業員の給与形態によって異なります。
まずは大きな枠組みとして、3つのパターンを理解しましょう。
1. 時給制・日給制の場合
最もシンプルなのが、時給制や日給制の従業員です。
「実際に出勤した日数」がそのまま基礎日数になります。
これに加えて、後述する「年次有給休暇を取得した日」も基礎日数に含めてカウントします。
2. 日給月給制の場合
多くの企業で採用されている、最も一般的な月給の形態です。
月々の給与は固定ですが、欠勤や遅刻、早退をした場合に、その分の給与が減額(控除)されるのが特徴です。
この場合、基礎日数は「賃金支払いの対象となった日数」でカウントします
例えば、月の所定労働日数が20日の会社で、2日欠勤(無給)した場合、基礎日数は「20日 - 2日 = 18日」となります。
年次有給休暇を取得した日は、給与が支払われるため基礎日数に含めます。
この記事の後半で解説するケース別の数え方は、主にこの日給月給制を想定しています。
3. 完全月給制の場合
管理職などに見られる形態で、欠勤や遅刻、早退をしても給与が一切減額されないのが特徴です。
この場合、賃金は月の労働に関わらず、暦日全体に対して支払われていると解釈されます。
そのため、基礎日数は「その月の暦日数(カレンダーの日数)」となります。
例えば、8月であれば31日、9月であれば30日が基礎日数です。
自社の従業員がどの給与形態に当てはまるのかを、雇用契約書や就業規則でまず確認することが、正確なカウントの第一歩です。
【ケース別】これで完璧!基礎日数の数え方
それでは、具体的なケースごとに基礎日数に「含む」のか「含まない」のかを見ていきましょう。(主に日給月給制や時給制を想定しています)
1. 年次有給休暇を取得した日 → 含みます
年次有給休暇は、取得しても給与が支払われる(減額されない)日です。賃金支払いの対象となるため、基礎日数に含めてカウントします。
2. 休日出勤した日 → 含みます
休日出勤をして、その対価として休日出勤手当などの割増賃金が支払われる場合は、賃金支払いの対象日として基礎日数に含めます。
もし代休を取得した場合は、休日出勤した日を基礎日数に含め、代休として休んだ日は含めないのが一般的です。
3. 欠勤した日 → 原則、含みません(日給月給制・時給制)
日給月給制や時給制において、自己都合による欠勤でその日に対して賃金が全く支払われない(欠勤控除される)場合は、基礎日数に含みません。(※完全月給制の場合は、前述の通り欠勤日も基礎日数に含みます。)
4. 会社都合の休業日(休業手当を支払った日) → 含みます
会社の都合で従業員を休業させ、労働基準法に基づき休業手当を支払った日は、基礎日数に含めます。
5. 労働災害で休業した期間 → 含みません
業務中や通勤中のケガ・病気(労働災害)で休業し、労働基準監督署から休業(補償)給付を受けている期間は、会社からの賃金支払いがないため、基礎日数には含みません。
6. 育児休業・介護休業を取得した期間 → 含みません
育児・介護休業法に基づき、育児休業や介護休業を取得している期間は、通常、会社からの賃金支払いはありません。(雇用保険から育児休業給付金などが支給されます。) そのため、この期間は基礎日数には含みません。
7. その他のケース
- 慶弔休暇など:就業規則で有給と定められている場合は含みます。無給の場合は含みません。
- ストライキ期間:賃金が支払われないため含みません。
- 試用期間:雇用保険に加入していれば、他の従業員と同様にカウントし、基礎日数に含みます。
基礎日数が「11日未満」の月が多いとどうなる?
なぜ、この基礎日数を正確にカウントする必要があるのでしょうか。
それは、雇用保険の失業手当(基本手当)を受給するための条件に関わってくるからです。
失業手当の受給資格を得るためには、原則として「離職日以前2年間に、被保険者期間が12か月以上あること」が必要です。
そして、この「被保険者期間1か月」とカウントされるのは、「離職日から遡った1か月ごとに区切った期間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月」なのです。
つまり、基礎日数のカウントを誤り、本来11日以上ある月を11日未満としてしまうと、従業員が失業手当をもらえなくなったり、もらえる日数が減ってしまったりする可能性があるのです。
数え間違いを防ぐためのチェックポイント
ミスのない離職証明書を作成するために、以下の点を最終確認しましょう。
- 雇用契約書や就業規則を準備する:まず給与形態(完全月給制か日給月給制か等)を確認しましょう。
- 給与明細とタイムカード(出勤簿)を突き合わせる:実際の勤務状況と給与支払いを照合しましょう。
- 判断に迷ったら、安易に自己判断しない:ハローワークや社会保険労務士に確認しましょう。
Q&Aコーナー
Q1. パートタイマーやアルバイトの基礎日数はどう数えますか?
A1. パートタイマーやアルバイトの方は時給制であることが多いため、基本的に「実際に勤務した日数」と「有給休暇を取得した日数」を合計した日数が基礎日数となります。
Q2. 基礎日数を間違えてハローワークに提出してしまいました。どうすれば良いですか?
A2. 間違いに気づいた時点で、速やかに訂正の手続きを行う必要があります。離職証明書の内容を訂正するための「訂正届」を、管轄のハローワークに提出します。放置してしまうと、不正受給とみなされるなど、後々大きな問題に発展する可能性もあります。気づいたらすぐに、正直に申し出て対応しましょう。
実務上の心構えとして
ここまで基本的な数え方のルールを解説してきましたが、実務の現場では、提出先のハローワークや担当者によって解釈が若干異なり、まれに訂正を依頼されるケースもございます。
まずは本記事で解説した全国共通の基本をしっかりと押さえて正しく作成することが大前提です。
その上で、もし行政から指導や訂正依頼があった際には、真摯にその指示に従い、臨機応変に対応していく姿勢も大切です。
まとめ
離職証明書の基礎日数の数え方は、まず「給与形態」を確認し、その上で「賃金が支払われる日かどうか」という基本原則をしっかり押さえることが重要です。
ケースごとに丁寧にあてはめていけば、決して難しいものではありません。
従業員の退職後の生活を支える大切な手続きだからこそ、正確な書類作成を心がけたいものですね。
社労士事務所ぽけっとでは、こうした日々の労務管理に関するご相談にも、親身に対応しております。
「うちの会社の就業規則だと、どう判断すればいい?」
「給与計算や社会保険手続き全般を専門家に任せて、本業に集中したい」
とお考えの経営者様、人事ご担当者様は、ぜひお気軽に当事務所までお問い合わせください。
【免責事項】
本記事は、掲載時点の法令や情報に基づき作成しております。法改正等により、記事の内容が最新の法令と異なる場合もございますのでご了承ください。具体的な事案に関しては、必ず専門家にご相談いただくか、管轄の行政機関にご確認くださいますようお願い申し上げます。