算定基礎届のキホン!支払基礎日数の数え方をケース別に徹底解説

今年も算定基礎届の提出時期(7月1日~7月10日)が近づいてきました。 企業の経営者様や人事労務担当者の皆様は、そろそろ準備を始められる頃ではないでしょうか。
算定基礎届は、毎年1回、従業員の社会保険料を計算する基準となる「標準報酬月額」を見直すための大切な手続きです。この届出内容に基づいて、毎月の健康保険料・厚生年金保険料や、将来受け取る年金額などが決まるため、正確な作成が求められます。
数ある記入項目のなかでも、担当者の方から特にご質問が多いのが「支払基礎日数」の数え方です。
「月給制で欠勤があった場合、日数はどう数えるの?」
「パートタイマーの特例がよく分からない…」
「最新の様式だと、備考欄はどこにチェックすればいい?」
など、判断に迷うケースも多いかと思います。
そこで今回は、算定基礎届で最も重要な項目のひとつである「支払基礎日数」について、様々なケースを整理し、最新の様式に合わせて分かりやすく解説していきます。この記事を最後までお読みいただければ、支払基礎日数の数え方に迷うことがなくなり、自信を持って算定基礎届を作成できるようになります。
そもそも「支払基礎日数」とは?
支払基礎日数とは、簡単に言うと「給与(報酬)の支払いの対象となった日数」のことです。
算定基礎届では、原則としてその年の4月・5月・6月に支払われた給与をもとに新しい標準報酬月額を決定しますが、その際に「支払基礎日数が一定の日数以上ある月」だけを算定の対象とします。
この「一定の日数」が、正社員やパートタイマーといった働き方によって異なるため、少し複雑に感じられるのです。支払基礎日数を正しくカウントできていないと、算定対象月を誤り、結果的に社会保険料が本来の金額と異なってしまう可能性があるため、正確な理解が非常に重要になります。
【ケース別】支払基礎日数の数え方
それでは、給与体系や勤務状況別に、支払基礎日数の具体的な数え方を見ていきましょう。
Case 1:月給制・週給制の場合
月給制や週給制で給与が定められている従業員の場合、支払基礎日数の数え方はシンプルです。
- 原則:暦日数
その月の暦日数が、そのまま支払基礎日数となります。 例えば、5月であれば「31日」、6月であれば「30日」です。
【要注意!】欠勤控除があった場合 担当者の方が最も間違いやすいのが、この欠勤控除のケースです。「欠勤した日数分を、暦日数から引くのでは?」と考えてしまうかもしれませんが、原則として、欠勤控除があっても暦日数が支払基礎日数となります。
例えば、月給制の従業員が5月(31日間)に3日間欠勤し、給与から欠勤控除が行われたとしても、支払基礎日数は「31日」のままです。
※ただし、就業規則などで「出勤日数に応じた日割り計算で支給する」といった定めがある場合は、その規定に基づいて計算した日数(=出勤日数など)が支払基礎日数となることもあります。自社の給与規程がどちらに該当するか、一度確認しておくと安心です。
(実際は、歴日数ではなく出勤日数などが支払い基礎日数になることが多いです。)
Case 2:日給制・時給制の場合
日給制や時給制の従業員の場合は、実際に出勤した日数で考えます。
- 原則:実際に出勤した日数
例えば、4月に出勤したのが18日であれば、支払基礎日数は「18日」となります。
Case 3:有給休暇を取得した場合
年次有給休暇は、取得しても給与が支払われる(減額されない)休暇のため、給与支払いの対象となる日として扱います。
- 月給制の場合: 暦日数が支払基礎日数なので、有給休暇の取得日数に関わらず暦日数です。
- 日給・時給制の場合: 出勤日数に、有給休暇の取得日数を加えた日数が支払基礎日数となります。
(例)時給制で5月に15日出勤、3日有給取得 → 支払基礎日数 = 15日 + 3日 = 18日
Case 4:休職していた場合
病気や私傷病で休職し、会社から給与が支払われていない場合(ノーワーク・ノーペイの原則)、支払基礎日数は「0日」となります。したがって、その月は算定の対象外です。 なお、健康保険から傷病手当金が支給されている場合でも、これは会社からの「報酬」ではないため、同様に算定対象とはなりません。
パートタイマー・短時間労働者の場合【少し複雑です】
ここからは、少し複雑なパートタイマーや短時間労働者のケースです。両者は似ていますが、社会保険のルール上、明確に区別して考える必要があります。ご自身の会社の従業員がどちらに該当するか確認しながら、ご覧ください。
Case 5:短時間労働者の場合
まず、パートタイマー等の方の中でも、社会保険の適用拡大により**「短時間労働者」として被保険者になっている方**のケースです。
「短時間労働者」に該当する方の定時決定では、他の従業員とは異なり、支払基礎日数が「11日」以上ある月を算定の対象とします。「17日」ではない点が大きなポイントです。
【社会保険における短時間労働者とは?】
- 週の所定労働時間が20時間以上
- 所定内賃金が月額88,000円以上
- 雇用期間が継続して2ヶ月を超えて見込まれる
- 学生ではない
- 「特定適用事業所」「任意特定適用事業所」または「国・地方公共団体に属する事業所」に勤務している (※特定適用事業所:2024年10月からは常時51人以上の企業に適用が拡大されています)
上記に該当する方の標準報酬月額は、4〜6月の支払基礎日数に応じて、以下のように決定されます。
- 3ヶ月とも支払基礎日数が11日以上ある場合 → 4・5・6月の3ヶ月の報酬の平均額をもとに、新しい標準報酬月額を決定します。
- 1ヶ月または2ヶ月だけ支払基礎日数が11日以上ある場合 → その11日以上あった月(1ヶ月または2ヶ月)の報酬の平均額をもとに決定します。
- 3ヶ月とも支払基礎日数が11日未満の場合 → 今回の定時決定による改定はおこなわれず、従前の標準報酬月額が引き続き適用されます。
このルールに該当する場合は、算定基礎届の備考欄にある「6. 短時間労働者」を〇で囲んでください。
Case 6:短時間就労者(一般的なパートタイマー)の場合
次に、上記 Case 5の「短時間労働者」には該当しない、一般的なパートタイマーやアルバイト(短時間就労者)の方のケースです。
こちらのケースでは、支払基礎日数が「17日」以上ある月が算定の基本となりますが、17日未満の場合の特例が設けられています。
標準報酬月額は、4〜6月の支払基礎日数に応じて、以下のように決定されます。
- 3ヶ月とも支払基礎日数が17日以上ある場合 → 4・5・6月の3ヶ月の報酬の平均額をもとに決定します。
- 1ヶ月または2ヶ月だけ支払基礎日数が17日以上ある場合 → その17日以上あった月(1ヶ月または2ヶ月)の報酬の平均額をもとに決定します。
- 3ヶ月とも17日未満だが、15日以上17日未満の月がある場合 → 支払基礎日数が15日以上17日未満の月の報酬の平均額をもとに決定します。 (例:4月が16日、5月が15日、6月が14日の場合、4月と5月の平均で決定します)
- 3ヶ月とも支払基礎日数が15日未満の場合 → 今回の定時決定による改定はおこなわれず、従前の標準報酬月額が引き続き適用されます。
3ヶ月とも17日未満で、上記の特例(15日以上17日未満の月で算定)に該当する場合は、算定基礎届の備考欄の「7. パート」を〇で囲んでください。
【まとめ】
今回は、算定基礎届における「支払基礎日数」の数え方について、最新の情報を交えて解説しました。
- 月給制: 暦日数(欠勤控除があっても原則変わらないが、社内規定によって出勤日数となる場合あり)
- 日給・時給制: 出勤日数 + 有給休暇取得日数
- 短時間労働者: 「11日以上」の月で算定
- パートタイマー: 「17日以上」の月で算定(特例で「15日以上」の月も対象になり得る)
支払基礎日数の正しいカウントは、適正な社会保険料を算出するための重要な第一歩です。年に一度の大切な手続きだからこそ、基本に立ち返って一つひとつ確認作業を進めていきましょう。
とはいえ、従業員ごとに雇用形態や勤務状況は様々で、判断に迷う個別ケースも出てくるかと思います。「やっぱり専門家に任せたい」「自社でやるのは不安だ」と感じられた場合は、ぜひ私たちにご相談ください。
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ご依頼の流れ
- お問い合わせ: まずはお問い合わせフォームからお気軽にご連絡ください。
- お見積り: 従業員数などをお伺いし、無料でお見積りを作成します。
- ご契約・書類のご提出: ご契約後、以下の必要書類をご提出いただきます。
- 作成・電子申請: 当事務所にて責任をもって算定基礎届を作成し、電子申請にて提出いたします。
- 手続き完了のご報告: 提出した届出の控え(副本)をお渡しして、手続き完了です。
【単発代行】ご依頼時にご準備いただく書類一覧
スムーズな手続きのため、ご依頼の際には以下の書類のご準備をお願いしております。
- ① 賃金台帳(4月・5月・6月分): 給与額や各種手当の確認に必須です。
- ② 出勤簿またはタイムカード(4月・5月・6月分): 支払基礎日数を正確に確定させるために必要です。
- ③ 労働者名簿: 被保険者の方の氏名や生年月日などを確認します。
- ④ 前年(前回)の算定基礎届の控え: 従前の標準報酬月額を確認するためにご提出をお願いしています。
- ⑤ 提出代行証明書: 電子申請の際に必要となります。当事務所指定の様式にご捺印をいただきます。
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【免責事項】
本記事は、2025年5月時点の法令や情報に基づき作成しています。今後の法改正などにより、内容が変更となる可能性があります。記事の内容の正確性については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。本記事の情報を利用して生じたいかなる損害についても、当事務所は一切の責任を負いかねますので、あらかじめご了承ください。最終的なご判断・お手続きをされる前には、必ず最新の情報を管轄の年金事務所等にご確認いただくか、専門家にご相談ください。