【変形労働時間制】退職者・中途入社者の「残業代清算」忘れていませんか?実務の落とし穴を徹底解説

退職時に発覚!? 変形労働時間制の 「未払い残業代」リスク

こんにちは。社労士事務所ぽけっとです。 日々の労務管理、お疲れ様です。

「うちは1年単位の変形労働時間制だから、繁忙期に残業が多くても、閑散期で調整すれば残業代は出ないはず」

そう考えて運用している経営者様や人事担当者様、ちょっと待ってください。
その社員が、もし対象期間の途中で退職してしまったらどうなるでしょうか?
あるいは、繁忙期の直前に入社してきた場合は?

実は、変形労働時間制において最も「未払い賃金トラブル」になりやすく、労働基準監督署の是正勧告を受けやすいのが、この「期間途中の入社・退職・異動者の取り扱い」です。

今回は、社労士事務所ぽけっとが、実務担当者が絶対に見落としてはいけない「中途精算」のルールを、厚生労働省の指針に基づいて解説します。

1. なぜ「中途精算」が必要なのか?

1年単位の変形労働時間制は、「1年間を通して働いて初めて、週平均40時間に収まる」ようにシフトが組まれています。

しかし、期間の途中で入社したり退職したりする従業員は、その前提条件である「1年間」をフルに勤務していません。
例えば、「繁忙期(週48時間勤務など)だけ働いて退職した」場合、その人は閑散期での調整を受けられないまま、ただ長時間労働をしただけになってしまいます。

これでは不公平であり、労働基準法違反となります。
そのため、法律(労基法第32条の4の2)では、実労働期間に合わせて労働時間を再計算し、本来支払われるべき割増賃金を精算することを義務付けています。

2. 【必読資料】まずは公的なルールを確認

詳細な解説に入る前に、厚生労働省が発行している公式のガイドラインをご紹介します。実務担当者は必ず一度目を通しておきましょう。

参考資料(厚生労働省) 1年単位の変形労働時間制 導入の手引 (PDF)
※リンク先の「途中採用者・と週退職者等の取り扱い参考資料(厚生労働省)」の項目をご確認ください。

3. 実務で発生する3つのパターンと対応法

中途精算が必要になるのは、主に以下の3つのケースです。

  1. 中途採用者(期間の途中から入社した)
  2. 途中退職者(期間の途中で辞めた)
  3. 配置転換者(転勤や異動で、変形制の適用部署に入った、または出た)

参考資料(厚生労働省)にもある通り、「転勤等により対象期間の途中で異動のある場合」についても清算が必要になる点は、見落とされがちなので注意が必要です。

ルール:週40時間を超えた分は「割増賃金」が必要

対象期間より短い期間しか働かなかった従業員については、以下の計算式でチェックを行います。

計算式: (実労働時間) - (40時間 × その期間の暦日数 ÷ 7) = 超過時間

この計算の結果、プラス(超過)になった時間分については、割増賃金(通常の残業代)を支払わなければなりません。

4. 【重要】精算(支払い)を行うタイミングは?

ここが実務上の最大のポイントです。入社と退職では、精算すべきタイミングが異なります。

ケース①:途中退職者・異動(転出)者の場合

タイミング】退職した時点(最後の給与計算時)

もう会社(またはその部署)にはいなくなるため、最後の給与でこれまでの働き方を清算します。
繁忙期直後の退職などは、思わぬ高額な残業代が発生することがあるので注意が必要です。

ケース②:途中採用者・異動(転入)者の場合

タイミング】対象期間が終了した時点

入社したばかりの月給与で清算するのではなく、会社の定めた変形期間(1年など)が終わったタイミングで、在籍期間全体を振り返って計算します。

例:4月1日開始の会社に、10月1日に入社した社員 → 翌年3月31日の給与計算で精算チェックを行う。

5. よくある間違い「40時間未満なら給与カット?」

中途精算の計算をした結果、「実労働時間が週40時間枠より少なかった」というケースも当然あります。(閑散期だけ働いて退職した場合など)

この場合、「働いた時間が短いから給与を減額(控除)してもいいか?」というと、答えはNO(不可)です。

変形労働時間制のシフト(カレンダー)を作成し、労働日・労働時間を指定したのはあくまで「会社側」の都合です。
会社が指定した通りに働いた従業員に対して、結果的に時間が短かったからといって賃金をカットすることは認められません。

  • 週40時間超割増賃金を支払う
  • 週40時間未満通常の給与を支払う(減額しない)

この「片側通行」のルールを肝に銘じておきましょう。

【まとめ】変形労働時間制、最大の落とし穴は「入退社時」にあり

変形労働時間制は、導入時のカレンダー作成だけでなく、「人が動くとき(入退社・異動)」の管理が非常に重要です。

ここを疎かにすると、退職した従業員から「繁忙期の残業代が支払われていない」と請求され、後から大きなトラブルに発展するケースが後を絶ちません。

  • 中途入退社時の計算ロジックが合っているか不安
  • 就業規則に中途精算の規定が入っているか確認したい
  • 計算ミスや法的リスクをゼロにするため、給与計算を代行してほしい

そのようなお悩みがあれば、ぜひ社労士事務所ぽけっとへご相談ください。貴社の運用が法的に適正か、プロの目で診断・サポートいたします。


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